安全の意識とは・・・・

ルクソールの悲劇・・・起こるべくして起こる事故ではあったが、遺跡を、上空から見て、何の感激が湧くのだろう・・・と、多少野次馬的な感想がないわけではない。寧ろ、地下の墓所を見るべく、天井落下の恐れのある地下に潜って、その歴史的遺産を眼にする・・・同じ危険を冒すなら、私は、こちらの方に納得する・・・それは脇において・・・

事故に至った経緯を、現地の同業者が説明していた。かつて、生産工場の「安全」に多少は関わった身ににして、その説明を観聞きすると、こんな杜撰なことでは、これまで事故が発生しなかったことの方が僥倖である・・・としか思えない。
気球が地上に近づいたとき、アンカーとなるロープ・・・プロパン・ボンベのホース、バルブに巻きつく様に操作されている様子だった。恐らく、プロパンガスボンベのノズル・ホース(取り付け部)は、ガス圧に耐える様には設計されていても、それに、何らかの「横の力」が加わって、「折る」様に力が加えられた時に耐える様には設計されてはいないだろう。

少し離れた場所で、プロパンガスボンベを、小型トラックの荷台から、傾斜の板の上を転がして地上に下ろしていた。その一本が、バランスを崩して、路上近くで「板」を外れて落下・・・そして、大爆発を起こした・・・死者二人。検証の結果、ボンベの口金が折れていた。ガスが噴き出した折、火花が残っていた・・・が、検証の結果だった。当時は、納得できなかったが、その後に、幾つかの事例を聴くに及んで、厳しいものだ・・・なと、納得。

ルクソールの事故・・・アンカーのロープの操作に問題がある・・・私は直感的に思う。何も、ゴンドラの中から、ボンベの近くで外に出せば、各の如くなるのは、当然だろう。ボンベへの影響が及ばない様に、ゴンドラの外に装置し、取り外しと、地上への操作が、ボンベに影響を与えない様に考えられるべきであろう・・・後知恵ではなく、全く、事故の想定が出来ていないことに、この国の後進性を思う。

現場で、天井走行クレーンのメンテナンス・・・部品の交換で、ロープを使った地上との共同作業が欠かせない。地上との連携作業の中に、安全に関する諸注意が必要であるのは当然だが、実は、そのロープが、クレーン機体の歩廊部分を横断することがある。機上で、分品を運ぶ作業者にとっては、最も危険な障害物である。一品毎に、一つの作業毎に、ロープを排除する・・・最も安全なのだが、メンテナンス時間の短縮の都合で、その作業が許されないことがある。結局、人員を配置して、監視する、あるいは、ロープを持ち上げて、足下の不如意を解消する。これ、安全の基本であり、常識である。

「もし、こうなったら・・・」・・・これを「仮想災害」と言う。災害がない・・・あるいは、想定する、想像すら出来ない・・・これ、後進的人間である。観光・・・その国の、その場所の「常識」が如何なるものか・・・その判断は、個人の教養のしからしめるものなのだろう。