「やらせ」のエートスからの脱却とは・・・・

1.
「やらせ」・・・これには、それなりの人物と技術が必要なのだろう・・・現役時代の、色々なsceneが蘇る。特に、労働基準局の監査を受ける際の「やらせ・・・当時は、そんな言葉も知らなかったが・・・」には、手の混んだドラマ仕立てだった。的外れの説明、意見を言う役割、それを激しく叱咤する役割、そして、妥当な意見・・・これが、真の嘘なのだが・・・を、したり顔で、時には、恐る恐る、さも真実を告発しているような口調で発言する役割・・・私は、常に、馬鹿な発言をする役割を与えられていたが、その発言が「まずい!」と叱られる時は、流石に落ち込んだものだ・・・・。
2.
今、回顧して、日頃は存在しない「会議」の雰囲気・・・私には、新鮮で嬉しかった。ドラマだから、scenarioを書いた人は、もっと楽しかっただろうが、演じている私も楽しかった。「悪」は悪なりの理屈が組み立てられる事実も、勉強と経験にはなった。つまり、「悪」を企む視点から、事象を観察する・・・・地域の自治会に関与していたころ、出席者の全てが、建前的・・・本音を隠蔽した・・・発言をするので、会議がまとまらない、行事の、具体的なプランが作れない・・・むしろ、「やらせ」の中に、幾つかの本音を紛れ込ませる方法はないものかと、呻吟したものである。
3.
そもそも、我々の周りは「やらせ」に満ちている・・・いや、その「やらせ」の内容から本音を探り当てて、日常を、それほどの間違いをせずに乗り切っているのである。「おれおれ詐欺」の被害者になるのも、「やらせ」を見破れない・・・・子供のことを知らないのに、知った風をするから、詐欺師に付け込まれるのである。都会で一人で暮らしている子供(息子であれ、娘であれ)が、どんな生活をしているかを知らずして、他人の言葉を信じる愚かさは、「やらせ」に満ちた世界が、普通に見えている愚かさにあるのだろう・・・私は、そう断定する。
4.
そもそも・・・こんな番組を、NHK,民放が・・・と、思うのだが、NHK・三宅さんの番組の様に、大手を振って「やらせ」をやれば、それは殆ど、視聴者も罪を感じない気楽さがある。ネット社会の「学び」の不足ではあるのだろうが、この番組を何人の人が視聴していたのか。または、それほど良識ある人々だったのだろうか・・・日頃はアダルトや、幼児虐待を「U-Tube」に見ている御仁が多かったのではないか。書き込まれたブログのリストを流してみて感じることである。ネットリテラシーとは、まだ主流の地位にあるとは、私は考えない。まぁ・・・ツイッターでも、こんなものを自慢する政治家を、私は信用しない。政治家は、言葉を尽くして、文字を駆使して・・・絵文字のことではない・・・その主張を公表すべきである。
5.
その典型がTV・・・・いや、TVこそが、世に「やらせ」と云う細菌をばら撒き、人々の神経・理性を麻痺させている元凶だと、私は思う。その最たるものが、芸能人casterを動員した、「ニュースワイドショー」である。時々、彼等の見せる「無知」ぶりが可愛いと云う御仁もいるが、局の魂胆はそこにある・・・つまり、視聴している方も「芸人だから・・・」との差別感覚なのだから、罪が罪にならない。私の紹介した、私の経験の「TV版」である。
私達は、そんな環境にならされている・・・・だから、九電・やらせメールの手法が幼稚、杜撰なのである。それを、あたかも鬼の首を取ったが如くに書きたてる、また滑稽なのは、件の芸人casterが、我が手柄の様に騒ぐ・・・日本列島は、喜劇の舞台になっているのである。
6.
ピーター・ジェニング、ウオルター・クロンカイト、日本人では、古谷綱正・・・等々、キャスターではないが、コーキー・ロバートも、私は好きだった。
TVの草創期、今日に語られる「名caster」が輩出したのだが・・・今は、TV界に、その面影はない・・・特に、日本の・・・。来した、ニュースannouncer、casterは、民放に転出、芸能人化して、古手の芸能人に媚を売っている始末である。「国谷裕子」が、新鮮でもあり、NHK的と言われながら、彼女の発言を、己の発言の基準点にする価値も、そこに生れているのだろう・・・と、私は思う。

繰り返しになるが・・・・我々は、おのれ自身の思考や発言が、ともすると「やらせ」に乗せられている、その犯罪に加担していることに用心深くあるべきであろう。染まっている己を自覚しながら、その染料を超える己をだすべく研鑽をかさねる覚悟が迫られている・・・・私は、そう覚悟したい。

昔・瓦版、そして、太平洋戦争の遠因になった、日比谷焼き討ち・・・・すべて、やらせの功罪である・・・そこから、自らの身を外して観察し考えることをせず、その中に浸りきるethosの中に、我々は生れ、今を生きていることの自覚が迫られている・・・私は、そう考える。自戒、自戒。

せめて、「やらせ」を責める、「やらせ記事」に踊ることは、自戒しよう!!!