岩波書店がコネ採用・・・快哉!

工高卒の私が、大手鉄鋼企業に採用された時、事務系30人、技術系(工高卒)30にん、そして、学卒が、同じ様に夫々30人・・・昭和40年に入る頃には、高卒のスタッフ社員の採用は、極端に少なくなっていたと思う・・・殆どスポーツ選手。
高卒(工高卒も含む)は、二次、三次の試験の合格者・・・私の時は、30人の技術系の一次試験に、数百人が、全国から駆け付けていた・・・だが、学卒の試験は、形式的なものだった様子が、その話に伺われた・・・多少の差はあっても、教授のお墨付きだった。
しかし、数年後に、彼等を凌ぐエリート社員が数名採用されているらしい事を知った。同世代・・・中学校までは机を並べた仲間が語る所に依ると、彼等は、企業家らの要請で、教授が推薦した人物だと言うことだった。現在は、如何なるものなのか・・・寡聞にして知らない。

時々、projectの端っこの方で、雑用の意手伝いをさせられることがあり、一般社員とは違った上品さと、優しさに触れる嬉しさがあった。が、その方々の何人かが、要職への昇進を眼の前にして不慮の事故の死を遂げる、重篤な病に倒れる・・・その姿が痛ましかった。そして、一般入社の学卒とは、随分と違った「日常」の様子に、痛ましさを増幅させたものである。

「お前らの様な「雑草」は、枯葉剤を撒いても枯れないがな・・・と、自身も雑草なのに、と、先輩が呟いていた・・・昭和30年代の話である。
そして、月日が過ぎて、平成3年・・・日本国中の学卒、高卒が、全員、system engineer、programmerになっても、未だ大幅に足りない・・・NTT,フジ電気、NECの社長が3人揃い踏みで、数年前から全国行脚をしていた頃の話である・・・平成4年には、このバブルも破れるのだが・・・。
そのIT企業に転籍・・・平成3年、金の草鞋で探し、入社させた学卒が私の下に配属された。煮ても焼いても食えない・・・周りの評価だった。確かに、世間話が出来ない、しかし「悪」にも染まっていないが、常識もなく、馬鹿さを露呈する若さも持っていなかった。結局、一時的な人材難に眼がくらんだ企業側の失態だった・・・と、私は思う。今は、普通の人に成ってくれていれば・・・と、陰ながら祈っている。勿論、大学・在学の4年間を「経験年数」とする、逆・学歴詐称が横行していた時代でもあったのだから・・・。企業も、その愚を犯したくないものもあったろう。

「コネ採用」は、採用する側の能力が試される採用方式である。比較して、良い方を採用するのではなく、その人物を「絶対的価値」と認めて採用するのだから・・・。時に、「顔役」がのさばり、昔の名前で甘い汁を吸おうとする輩も跋扈する。つまり、採用する側には、「コネ」の質を見極める能力と、採用対象の「質」の見極めと、二重の評価が強いられるのである。

恐らく、costばかり嵩んで、はかばかしい成果の得られない現行採用方式に絶望しての採用方法の変更なのであろう。また、二重三重に内定を得て、企業を手玉に取る学生の存在にも許せないものがあるだろう。職業とは、それほど軽いものではないのである。
時に、眼に止まった人材を、4年なり、7年なり、時に10年を超えてしっかりと観察し、見極めて採用したい・・・OA採用の理念で在るはずである。プロ野球のドラフト制度の「効」ででもあろう。

己の姿を見せ得ない子供、学生には不利・・・観念的な思考である。人を欲しがる人は、人を見抜くものであろう。百年以上も続く老舗の工場・・・それなくして、百年を超える歴史はありえない。また、幕末・明治を生き抜いた「藩」には、養子で、その藩主の座を繋いで来た藩が多いとは、歴史家の語る所である。

また、私の嫌いな「むっつりスケベ」感覚の排除にもなるだろう・・・と、嬉しい岩波の選択である。
内定を複数得ている学生の多くは、2,3年の間に、数百枚の、企業関係者の名刺を取得していると、recruit関係の方々は言う。「男は黙って・・・」とは、昔から、見せるものがある人物の特権でしかない・・・その為の努力は、対人関係の修練の賜物なのだろうと、私は、その能力に長けた友人の姿に思う。

ツイッターの巧みさが「生」の人間の対話の中に生きる筈がない。ゲームの巧みさが、対人関係の中で生きる筈がない・・・TVの馬鹿タレントが、その出演料の為に、涙ぐましい「馬鹿」を演じる・・・時に、本当の馬鹿な芸人もいるのだが・・・その映像を、対人関係の教科書にする話を、電車の中の若者の会話に中に聞いて、思わず、警告を与えようとして、傍の友人に制止されたこともある・・・「馬鹿は馬鹿なんだよ・・・彼等の周りにも良き人々がいるのだが、馬鹿には見えず、聞こえず、三猿ならぬ二猿・・・口だけは塞げないのだよ・・・」と友人の警告だった。
「文明」への危ないaccessの結果を信じる軽率さが消えれば、「教育」にも、多大な影響を与えるだろう・・・とは、思うのだが・・・。

コネ採用・・・大賛成。人間的な人間が、人間的な人材として、人の眼鏡に叶った時、やっと、一人の人間になるのである。この理念が、「平等」の、悪なる価値観の下に、かくも長く忘れられていたことの方が、私には不思議であり・・・あるいは、企業家の怠慢だったのかもしれない。