東京スカイツリー・・・・を論ず!

訪れることはないと思うが、鉄鋼技術者の一人として・・・といっても、端っこの、更に端っこの一人に過ぎないのだが、20歳代を過した現場が「型鋼」の素材鋼片・・・ブルーム、ビレット、或いは、粗形(大型鋼材、シートパイルの素材鋼片)・・・を圧延する工場だっただけに、興味深いものがある。昨日〜今日の、NHK特集番組を落ち着いて観ることはできないが、後日の再放送はDVDに収録して、時折楽しみたいと思っている。
エッフェル塔の、エッフェルは、「鋲」打ちの特許を有していた・・・故に、フランスにはエッフェル塔を横にした様な、古い橋は沢山あるそうである。彼は、この技術で、相当な荒稼ぎをしたのだが、パナマ運河で、殆ど倒産したと言う。つまり、この運河の建設は「水」との闘いだったからである・・・スエズ運河と同様にフランスが挑戦したのだが、スエズは「砂」との闘い、パナマは「水」との闘い・・・恐らく、エッフェルが、その力を発揮する前にgive upしたのではないか・・・但し、投資した「金」は戻って来なかった。後に、アメリカが成功するが、そのCourseは、殆どフランスの構想と同じだったと言う。
そのエッフェル塔と東京タワー・・・東京タワーの方が、部材が大きいと言う・・・今朝の“みのもんた”もう・・・私の観察では、エッフェル塔の方が大きいと、一見して思ったものだが、或いは、下部だけの観察の早とちりだったのかも知れない。技術的には、東京タワーの鋼材と、エッフェル塔の鋼材では、その「品質」において、大きな差がある筈・・・東京タワーの方が細くできるはずだが・・・地震の影響を、地震からの安全性を考えれば、同等もしくは僅かに太くなっているのかも知れない・・・と、思う。
しかし、東京スカイツリーは、その本体構造、その基礎構造に置いて、前二者の技術を大きく凌ぐものであろうと、推察する。あの高さになると、日の出と、火の入り時には、その太陽からの「熱」で、塔は数センチ撓むのだそうである。東京タワーの様に、踏ん張りがないだけに、その影響をもろに受けることになるのだろう。つまり、塔は、毎日、一日に二回・・・西に東に撓んでいることになる。その力を、塔全体の構造の中で、基礎構造の中で吸収しているのだろう。また、3・11の様な大地震・・・加えて、長く続く緩慢な揺れを耐える塔の姿を、カメラマン達は狙っているのだろうと思うが、興味深いものである。
恐らく、塔の形、高さだけが、巷でTVで喧伝されるが、鉄鋼技術者・・・特に、この塔の為に精進して来た技術者は、もっと「鉄鋼」を語って欲しいと思っているであろう。そもそも、「鉄」と「鋼」を知らずして、「鉄」で十把一絡げで語って欲しくないののが、この分野の技術者であり、職人である。
「鉄」は、「鋳物」で親しみが深い。「鋼」は、刀、刃物で親しみが深い。そして、鉄板もレールも、釘も、ネジも・・・「鋼」である。しかい、複雑な形状は「鉄」、即ち「鋳物」でなければ、ほぼ不可能・・・。
東京タワーは・・・エッフェル塔も・・・リベット構造と称される。つまり、鋼材の部品をリベットで繋いで構造物として誕生する。真赤に焼けた「リベット」を、高くほうり上げ、それを神業で受け止め、二人の職人が締める・・・騒音も激しいものだった。後に、消音のmachineも使われたと言うが、私はお目に掛かっていない。現場は、耳をつんざく騒音だった・・・将に、東京タワー建設の騒音は、戦後日本復興の、最後の叫びでもあったのである。恐らくエッフェル塔の建設も騒音の中で行われたはずであるが、これは、パリ万国博の新しい時代の「幕」を開けるものもあったのであろう。シートパイルを打ちこむ騒音・・・リベット打ちの騒音・・・基礎杭を打ち込む騒音・・・、全てが、工事現場から消えた。現代の建設現場に騒音は全くない・・・近くに大きなスーパーがopenした・・・イオン・・・途中の中断もあったので、整地から、2年も要しただろうか・・・200メートルも離れていないのに、この間に騒音を耳にしたことがない。時々、建設現場を遠くから観察したが、殆どが、溶接やリベットで作られたpartsを、ボルト、ナットで組み立てて行くものに、私の目には映った。かつて耳にしたことのある、「リーマボルト」と言われる様な、精度の高い「ナット」であり「ボルト」なのだろう・・・と、思ったものである。

3・11以来・・・地震のnewsに怯える日本人が、この東京スカイツリーの高さには怯えない。身勝手なものだとは思うが、これが「文明」であり、「文明」に憧れる人間の心理なのである。不吉な事を言うようだが、万万が一・・・この塔が倒壊することが在った時、地元の人々の犠牲も大きいだろう・・・しかし、その心配の声を全く聴かない。その計画が浮上した時から、人々に喜ばれた、幸せな「文明」である。倒壊の時に犠牲になる「命」と、原発を怖れて騒ぐ「命」と、その差はなにか・・・少し、頭が冷えてきたら、考えてみるのも酔狂であろう。

今は、NHKの放送を楽しみにしてるだけ・・・DVD収録が出来たら、再度、論じて見たい。