55年体制を遠望する・・・・

記者会見で、自民党安部晋三総裁が、「55年体制」に触れていた。この時、19歳で社会人になった私は、鮮明に記憶している・・・勿論、ややこしい人の出入りはべつだが・・・今に思えば、本格的な戦後政治が始まったのだと、言えなくもない。この5年後が「安保闘争」である。この闘争、岸信介には、日本のアメリカ離れを・・・同盟を維持し、より強い発言権を確保する関係・・・求めるものでもあり、相手がアイゼンハウアーだったこともあって、悲願ではあったらしい。

しかし、鳩山一郎の様に、国民心理を利用できる知恵も性格も持ち合せがない「岸信介」は、確信犯として「虎の尾」を踏んだ・・・当時の、特に「左派」には、ソ連大事、中国共産党北朝鮮社会主義政権は、大きな憧れだったのだから、もともと、貧者の愚痴を優越感を以って聞く耳はあって、きちんと世界の情勢を踏まえた議論の出来よう筈もない。東京等都市部の似非intelligentsiaの怒りを買い、似非intelligentsia特有の「憤懣」を買い、付和雷同的、intelligentsiaにはあってはならない、大衆迎合のdemoを誘発した。この国のintelligentsiaの、思想の浅さを証明したのが、「60年安保闘争」だったと、社会人5年生だった「私」は、今も確信する。
何故なら、製造現場は、そろそろ大飛躍へのtouchを確実にしていたし、この後、日本の製造業は、業種によっては、世界一の地位を得るまでになっていたのである。それが見えない、感じられない、都会intelligentsiaの愚行が、将に「安保騒動」だったのである。この頃、都心から羽田への高速道路の建設が盛んであったが、八重洲から千葉市川崎製鉄を訪問した私の「くるま」は、約6時間超をようしたのである。

この時、地方の警察官が大量に投入されたが、その大半が「高卒」の警察だったと、私は聞いた。東京と言う都会で、親の脛を齧りながら遊興に過す彼等に、大きな敵意で、demo鎮圧に当ったのだと言う。「あれは、格差不満を解消するに、絶好の機会だったのですよ・・・」と、後日に、中年になった、元・警察官の談話だった。

当時、吉田茂は、色々な名誉職を転々としていたらしいが、「憲法は、早く改正しなければ・・・」と呟いていたと、彼に関する「著書」の筆者の何人かは記しているはずである。彼には、独立への道を探っていた吉田茂にとって、占領軍、極東委員会、そしてアメリカを納得させる「憲法草案」と、独立後には、直ぐにでも“自主憲法”に脱皮出来る様な、言わば巧妙な憲法草案を作り得ない「学者、識者」に大きな不満を以っていたはずである。
それが、全面講和か、個別講和か・・・の議論沸騰の中で、「全面講和」の旗印を掲げて、世間に左翼に迎合する、東大総長・南原繁への「曲学阿生」なる科白を言わしめたのである。

戦後の政治史を紐解く限り、日本の保守が、その政治的選択を誤ったとは、私は考えない。寧ろ、左翼・・・保守に集りつつ勢力を温存しようとした・・・への、気兼ねが、保守内部の亀裂を生み、派閥を生まざるを得なかった・・・派閥が、政治家を育てるsystemであったことは認めるが・・・実情を、今後に如何に活かすか、私は、ポスト安部の真骨頂だろうと考える。

吉田茂・・・岸信介・・・池田勇人・・・田中角栄・・・中曽根、小泉・・・と、夫々に特色ある自民党政治で、この国は発展もし、色々な課題を現在に残して入る。しかし、果敢な挑戦に、新たな政治的活力を期待するのも楽しみなものである。

その意味で「鳩山・小沢・民主党」は「鬼子」である。生れるべきではない「政党」だったのだが、「地獄」も体験するまでは、あるいは覗いてみるまでは、その存在と、その悪辣な政治思想をしることは不可能である。第一次吉田内閣後の、社会党・片山内閣、そして、民主党の芦田内閣・・・前者は、対応能力の不足で消え、後者は、汚職で姿を消した。汚職も、発展性のある汚職と、己が懐だけを潤した汚職と・・・汚職の下手な、社会党が、遂に政権の座を手に入れることが出来なかった所以でもあろう。

今、安部・新政権が、吉田茂岸信介、あるいは、中曽根康弘の夢を実現すべく、その政治信条を開陳し始めた・・・何処まで成功するか。長生きして見て見たいものだが、無理だろう。

間違えば、戦前への道が・・・「轍」・・・が、未だ眼の底にある。開国した時から「徴兵制」の軍隊・・・勿論、志願兵は存在したが・・・・の歴史しか持っていない国家である・・・現在が志願制と言えなくもないが・・・また、「国防婦人会」なる、鵺の様な組織を跋扈させた、悪なる歴史が、女性の地位向上に寄与したと、見当違いの論を展開する識者もいる。女性・婦人の平和観・・・これが、どんな「国家理念」を誕生させるか・・・この国の命運にも関わるのではないか・・・安部晋三の丁寧な対応が望まれる。