合意と納得・・・サンデル・マイケル白熱教室・東北大学

NHK総合の放送では、1時間枠だったが、実際には、2〜3時間のレクチャーだったのだろうと想像する。九州でも、西南学園大学で行われたが、抽選に外れて参加できなかった。その様子は、地元RKBの電波に乗ったが、余り感銘を受けるものではなかった。講演の課題がなんであれ、会場の雰囲気を決めるのは、会場からの発言であり、マイケル・サンデルの仕掛ける討論に会場が、どの様に反応するか・・・が、この教室の価値である。
マイケル・サンデルの「正義を考える」・・・NHKでも12回の、ハーバードにおける講演が放映された・・・全部DVDに収めてある・・・が、日本の幾つかの大学における、日本版白熱教室の何れもが、足下にも及ばないことを痛感した。講演者の、それぞれの大学の名物教授ではあっても、学生の反応が、ハーバードとは雲泥の差・・・辛うじて、大学の名称は急に思い出せないが、大学院生を相手にした白熱教室が、緊張感があって面白かった・・・程度である。

今回の、東北大学を舞台に、学生、一般人を対象にした白熱教室・・・なぜ、わざわざサンデル・マイケルなのかの疑問は残るが、会場の聴衆を挑発しながら、持論の哲学を披露してくれる・・・つまり、結論は・・・特に政治的なものはない。テーマを提示し、賛成・反対の意思表示を求め、夫々から発言を引き出し、反対討論を求める。そして、その双方から、考えるべき、新たな課題を提示するのだが、それは、会場の聴衆の今からの、解決すべき、取り組むべき新たな課題である。

冒頭に、開催に先立って寄せられた一人の女性の意見が紹介される・・・本人の口から・・・曰く、東北人は議論を好まないから、この催しは失敗に終わるだろう・・・と。そして、それに挑戦するレクチャー始まる。
・・・曰く・・・
①今後の復興について・・・「楽観的か?」OR「悲観的か?」
自主避難者にも経済的補償を・・・「すべき!」、「すべきでない!」
③災害時・・・・「誰も見捨てない!」、「自分の命を優先する!」
その評決?・・・は、
①・・・50%、50%
②・・・「すべきでない」が、僅かに多数・・・
③・・・「自分の命を優先する」が、これも僅かに多数。
備考・・・
③は、民生委員、消防士に多数の犠牲者が出たことへの・・・是非の討論だった。行政の、民生委員を総括している職員の発言に・・・「生き残って、その後の救援活動に貢献して欲しかった・・・」が重かった。しかし、現場で、自分が危ない判断する余地はなかった・・・使命感で、状況の把握もないままに、救助、救援に向かった様子が、ナレーションで語られていた。己の責務を全うする、日本人の特徴かもしれない。暴漢に襲われた小学校で、教師が真先に教室から逃げ出した。また、先のルクソールの気球の事故でも、大やけどを負ったとは言え、オペレーターが真先にゴンドラから脱出した状況は、この東北では見られなかったのではないか・・・

何れの、問いも、賛否対立の双方の発言があり、マイケル・サンデルが賛辞を送っていたのは、双方が、非常に理性的に、論理的に静かに発言していたマナーだった。一人、映像が紹介されていたのは、一人の老人が、感情的な、一方的に、相手の発言を批難するがの響きのあるある発言しているものだった。恐らく、映像がないところでは、まだまだあったのではないかと思うが、番組の映像では見せてくれなかった。しかし、時々NHK討論会・・・三宅アナウンサーの司会で・・・のパネラーの発言とは全く違うレベルの高いものだった。

一人、滔々と英語での発言が聞かれたのが、私には時代を感じさせてくれた。これは、西南学院大学でも、あるいは、東京大学、そして慶応だったか、早稲田だったかでも見られたものであった。私も、残りの時間で、同時通訳のイヤホンなしで聴ける様になりたいものだと・・・ないものねだりだが、思ったものだ。しかし、冷静に、論理を尽くす討論が、この国でも可能になりつつある・・・「合意」と「納得」・・・・私は、「納得する、させる」・・・その努力が、可能になる時代が、すぐそこに近づいている・・・希望である。